おろかなり【形容動詞】:いいかげんだ・不十分だ
《例》「帝の御使ひをば、いかでかおろかにせむ。」
訳:帝の使いをどうしていい加減に扱うだろうか、いや扱わない。
「おろかなり」とあると、馬鹿だという意味の「愚か」というイメージが先行しますが、入試の古文ではその用法はほとんど使われません。「疎か」という字の「いいかげんだ・不十分だ」というが使われます。古文単語にはこのように、現代でも使われている言葉とは違う意味を持っているものがよく出てきます。誤読につながるのでそのような単語は特に入念に暗記をしておきたいものです。
また、「おろかなり」の慣用句で「いふもおろかなり」というものがあります。この場合は「いうのが(この表現では)不十分だ」という意味で「いくら言っても言い尽くせない(それほど程度がはなはだしい)」という訳になります。
《例》「六月になりぬれば音もせずなりぬる、すべていふもおろかなり」
訳:六月になってしまうと(ほととぎすの)声もしなくなってしまうのも、すべていくら言っても言い尽くせない。
「いへばおろかなり」「おもふもおろかなり」など形も様々ありますが、すべて「いくら言っても/思っても 言い尽くせない/思いが尽きない」という意味になります。